RSウイルス感染症は、RSウイルスが原因の急性呼吸器感染症です。乳幼児に多くみられ、2歳までにほぼ100%が感染すると言われています。乳幼児の初感染では時に重症化することがあります。年長児や成人における再感染例では重症になることは少ないですが、最近では高齢者施設での集団発生など、高齢者でのRSウイルス感染が注目されています。
感染経路 | 飛沫感染・接触感染 |
潜伏期 | 2〜8日間 |
感染力(R0)* | 3 |
感染症法 | 5類感染症 |
※R0:基本再生産数:集団にいる全ての人間が感染症に罹る可能性をもった状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表します。
●主な症状
初感染の場合、発熱、鼻汁などの上気道症状が出現し、通常は7〜12日程度で自然に軽快します。上気道症状に続いて、約20〜30%で気管支炎や肺炎などを合併することがあります。
高齢者や慢性肺疾患(喘息、COPD)、慢性心疾患、免疫不全などの基礎疾患を有する成人、高齢者施設に暮らす成人については重症化のリスクが高いと言われています。
●診断
呼吸器分泌物よりRSウイルスを分離・同定するか、抗原迅速診断キットにより診断します。なお、抗原迅速検査の保険適用は、入院中の患者、1歳未満の乳児、バリビズマブ製剤適応患者のみが対象となります。
●治療法
特異的な治療法はなく、対症療法が中心です。重症化した場合には、酸素投与、人工呼吸器管理などが行われることもあります。
●予防法
RSウイルス感染症の予防には、以下の方法があります。
1) モノクローナル抗体製剤
重症化リスクの高い新生児、乳児のみが対象で、バリビズマブ(シナジス®)、ニルセビマブ(ベイフォータス®)があります。
2) RSウイルスワクチン
60歳以上のハイリスク患者の重症化予防を目的としたRSウイルスワクチンがあります。アレックスビーといい、60歳以上を対象とするRSウイルス感染症予防ワクチンとして2023年9月に日本で初めて製造承認を取得しました。高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患など)、リウマチ・膠原病などの治療により免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあります。日本では約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡が推定されます。このワクチンの接種により、症状や入院リスク、死亡リスクを4分の1から5分の1程度にまで抑えることができます。このワクチンは不活化ワクチンで、帯状疱疹ワクチンなどと同時接種は可能です。1回のみの筋肉注射で、効果の持続は1年以上とされています。現在も臨床試験が続いていますので、有効期間がさらに伸びる可能性があります。副反応は他のワクチンと同様に局所の痛みや腫れ、だるさなどですが稀にアナフィラキシーを起こすことはあります。